ビジネスアイデアパターン

専門的な技術を必要とする仕事は、古くから存在するものほど、その技術の習得に長期間要するとされているものが多くあります。しかし、伝統的にそのように言われているだけで、実際は効率的に学習することで短期間で習得可能な技術も少なくありません。そのような仕事に着目し、短期間で習得できるようプログラムが組まれたスクールを開くというビジネスモデルです。

東京すしアカデミーは、東京すしアカデミー株式会社が運営する、短期間で集中して寿司職人としての技術や知識を学ぶカリキュラムです。通常は寿司屋に弟子入りをして、師匠の技術を盗みながら３年から５年をかけて修行を積み、ようやく一人前になれる世界ですが、東京すしアカデミーでは２ヶ月で寿司職人としての一通りの技術や知識が習得でき、卒業後は寿司屋を開業することができます。入学金と学費を合わせて85万円と高額ですが、寿司屋に弟子入りすることと比べるとメリットは大きく、寿司屋の開業を目指す多くの生徒が通っています。

大和麺学校は、株式会社大和製作所が運営する、短期間で集中してラーメン、うどん、そばのプロを育てるカリキュラムです。通常はラーメン店などに弟子入りをして、師匠の技術を盗みながら３年かけて習得しなければならないラーメン店を開業するために必要な技術や知識が、大和麺学校ではわずか１週間で習得できます。材料の分量や、茹でる温度や時間など、全ての工程が徹底的に数字で管理されたデジタルクッキングと呼ばれる手法により、誰もが全く同じものを作れるようになり、卒業後はラーメン店を開業することができます。ラーメンは６日間、うどんとそば５日間の、それぞれのコースがあります。

原田左官工業所では、通常は10年かかる左官（建物の壁などをコテを使って塗り上げる仕事）の技術の習得を、わずか１ヶ月で習得できる教育プログラムを実施しています。一流の左官職人の技の全てを動画で撮影し、その映像の通りにモデリングしていくという手法により、短期間での技術の習得を実現しています。伝統的に受け継がれてきたプロの技術を徹底的に標準化し、モデリングが可能な教育プログラムに落とし込んでいます。敬遠されがちな職業でもあり、離職率の高い職業でもある中、左官職人の人材確保においても大きな価値をもたらしています。

リエゾンプロジェクトは、株式会社おかやま工房が主催する、パン屋を開業するために必要な一通りの技術と知識を学ぶことができる教育プログラムです。長年の修行が必要とされるパン職人の世界において、５日間の研修期間で、パン屋を開業できるようになります。独自にブレンドされた小麦粉を使用し、重さや長さなどを徹底的に数値化することで、誰が作っても美味しいパンが作れます。技術面だけでなく、設備面や経営面についても学習できるため、卒業後はすぐにパン屋を開業することができ、開業後のフォローも受けられます。最短で夢を実現できるだけでなく、後継者不足の問題解決にも貢献しています。

一人前の和菓子職人になるためには、餡炊き10年と言われるように、師匠の元で10年もの修行が必要とされています。和菓子職人の数が減少を続けているのも、それが理由のひとつです。そこで、１ヶ月程度の短期間で和菓子職人としての技術や知識を一通り習得でき、卒業後は和菓子店を開業できるようになる和菓子職人養成スクールがあってもいいのではないでしょうか。また、このスクールの卒業生を、後継者不在に悩む地方の和菓子店に送り込むようなサポートも合わせてできれば、面白いのではないでしょうか。