ビジネスアイデアパターン

売れ残りを安く仕入れて販売


ビジネスの原点は、安く仕入れて高く売ることにあります。安く仕入れる方法は様々ですが、安く仕入れることができる商品には、必ず明確な理由があります。それは、何らかの事情により、本来の価値が低下したことにあります。商品を卸す側としても、安い価格でも構わないので、その事情を受け入れてくれる相手に対して一刻も早く卸したいという思いがあります。そこで、その事情を受け入れた上で商品を安く仕入れ、その事情をデメリットと感じない顧客に対して販売するというビジネスモデルです。

■タグカットアパレルShoichi

株式会社Shoichi(ショーイチ)は、アパレルの在庫処分を行っています。アパレル業界には、多くの売れ残り在庫が存在し、その処分方法に頭を悩ませています。アウトレットで安く販売するなどの手段もありますが、高級ブランドの場合、安売りはブランドイメージを損ねるため、価格を下げるにも限界があります。最終的な売れ残りは処分されるのが一般的で、一部報道ではバーバリーが年間約40億円相当の在庫を焼却していたとの情報もあります。そこで、このような売れ残り在庫を破格で大量に買い付け、ブランドイメージを損ねないようにタグをカットしてブランドが特定できないようにし、格安で販売する仕組みを構築しました。メーカー側としては、処分していたものを買い取ってもらえ、更にはブランドイメージを損ねることもないという大きなメリットがあります。消費者としても、高級ブランドの高品質のアパレルを格安で購入することができるため、大きな需要があります。双方のニーズをうまくつなぎ合わせたビジネスモデルにより、取り扱い量が拡大しています。

■ミリオン

株式会社ミリオンは、激安飲料自販機を手がける沖縄の企業です。オレンジ色の目立つ自動販売機が特徴です。飲料メーカーの倉庫に眠る、賞味期限の迫った缶やペットボトル飲料の在庫を格安で大量に買い付け、自動販売機で50円〜100円程度の激安で販売しています。自動販売機で飲料を購入する人のほとんどは購入後すぐに飲む場合が多いため、賞味期限が迫っていても全く問題はなく、大手メーカーの正規品飲料が激安で買えるとあり人気を集めています。在庫を処分したいメーカー側と、賞味期限は気にせず安く飲料を購入したい消費者を、うまくつないだビジネスです。また、固定賃料制で、自販機を設置した地主に毎月決まった賃料が入る仕組みになっているため、地主が損をすることは絶対になく、急速に広まっています。

■10円自販機

大阪市福島区に、全商品が10円の激安飲料自販機があります。運営しているのは飲料の卸会社で、賞味期限の迫った飲料を在庫処分の目的で販売しており、ボタンを押すと何が出てくるかわからないという仕組みです。売れ残り商品は捨てるにもお金がかかるため、10円でも販売した方がよいという考え方もありますが、それ以上に、10円自販機として話題となり観光地化していることが最大のリターンです。SNSでの拡散もあり、有名になることで、飲料卸としての本業への宣伝効果は計り知れません。

■TABETE

株式会社コークッキングは、TABETEという料理のマッチングサイトを運営しています。外食店では、急なキャンセルなどで作った料理が大量に余ってしまう場合があり、通常は捨てられてしまいます。しかし、それを食べたいという需要も世の中には必ずあるため、両者をマッチングさせるサイトを立ち上げました。料理の余りが発生した外食店がサイト上に格安でアップをすると、それを見て欲しいと思った一般消費者が、サイト上で購入、決済し、店舗に受け取りに行くというシステムです。サイト運営側は、手数料として販売額の35%を徴収する仕組みになっています。お店側としては、本来は捨てられる余った大量の料理を販売することができ、消費者側としては安く料理を購入することができるため、双方に大きなメリットのあるマッチングサイトです。余り物を安く仕入れて販売するというビジネスモデルを、サイト上で自動化することで、利便性と効率性を高めています。

■過去の新聞販売

新聞を購読すると毎朝必ず配達されてきますが、その日に読まないという人も意外と多くいます。例えば、1週間分の新聞をまとめて土日に読むという人もいます。このような人にとっては、毎朝最新の新聞が配達される必要は全くなく、週に1回、1週間分の新聞がまとめて届けられても問題ないのです。そこで、日々の売れ残りの新聞を安く仕入れて保管しておき、1週間分をまとめて配達する、格安新聞購読サービスがあってもいいのではないでしょうか。新聞は毎日多めに印刷されますので、余りは必ず出ます。金曜日の夕方までに、1週間分の新聞をまとめて届けるのがよいかもしれません。毎日読まない人にとっては安く購読できるメリットがあり、配達する側としても週に一度の配達で済むため経費が抑えられるというメリットがあります。

■土産物雑貨販売

売れ残りの新品を買い取るという概念は、企業だけでなく、個人を対象に考えることもできます。その代表例が旅行先でのお土産です。友人や同僚などに配ることを目的に、小物や雑貨などを旅行先でお土産として大量に買い込んでくることがあります。特に、海外で安価な雑貨を大量に買う場合、実際に配布する人数よりも多く買い込むことが多々あり、最終的に幾つか余ってしまうのです。つまり、新品の土産物雑貨が余るのです。そこで、余った新品の土産物雑貨を専門に買い取り、販売するサービスがあってもいいのではないでしょうか。世界中の国や地域の工芸品や雑貨類などに興味を持つ人は多くいますし、逆にお土産を買いそびれてしまった人もいますので、各地の土産物を新品の状態で提供することで、一定の潜在需要を掘り起こせる可能性があります。

売れ残りを安く仕入れて販売するという概念は、実はパターンが決まったマッチングビジネスです。ある人にとっては価値がないが、ある人にとっては価値があるという状態を見つけ出し、両者をつなぐというものです。また、ある人にとってはデメリットと感じる点が、ある人にとっては全くデメリットだと感じないという見方も大切です。あとは、対象となる物が何かという違いによって、供給する側と消費する側が自ずと決まってくるのです。このようなシンプルな視点でビジネスチャンスを探すことが重要で、両者のニーズが合致し、双方にとってのメリットが明確であれば、必ず成功することができます。