発想法&思考法ルーム

発想法と思考法の違い


革新的なアイデアは、発想法だけでは生まれません。思考法をベースとした一定の法則を用いることで、誰にでも簡単に生み出すことができます。つまり、思考法を考え方の基本とし、必要に応じて適切な発想法を選択して組み合わせることで、特別な能力や才能を必要とせず、マニュアル的にアイデアを量産することができるのです。量産されたアイデアの中には、くだらないアイデアも多くありますが、抜け漏れなく網羅的にアイデアを列挙することができるため、必ず革新的なアイデア、画期的なアイデアが生まれてきます。

 

革新的なアイデアは右脳人間にしか生み出せない、革新的なアイデアを生み出すためには広い視野を持つことが重要、このように言われることがありますが、決してそんなことはありません。日本人の多く、特に男性の多くは、物事を論理的に理屈で考える左脳人間です。また、広い視野を持とうと意識をすればするほど、視点はぶれていくため、抜け漏れなく網羅的にアイデアを列挙することができなくなります。それにより、逆に多くの盲点、死角が発生し、実はそこに革新的なアイデアが埋もれているのです。

 

革新的なアイデアは、論理的に物事を整理して考え、そこに抜け漏れなくアイデアを洗い出して当てはめていく、極めて左脳的で視野を絞った考え方により生み出される、実は極めてマニュアル的でシステマチックな世界なのです。

 

革新的なアイデアの発想を、アイデア発想法に頼ろうとしてきた人は、調べれば調べるほど出てくる、世の中に星の数ほどあるアイデア発想法に、何をどのように使えばいいのかと頭がパニックになっているのではないでしょうか。また、実際にいくつかのアイデア発想法を学び、実践してみても、革新的なアイデアは一向に生まれず、諦めている方も多いのではないでしょうか。それは、アイデア発想に向いていないのではなく、アイデア発想の能力がないのではなく、アイデア発想法自体が悪いわけでもありません。そもそものアイデア発想の考え方、そしてアイデア発想法の使い方が間違っているのです。

 

冒頭にも述べた通り、革新的なアイデアは、思考法をベースとした一定の法則により生まれます。具体的には、思考法をベースに、必要に応じて適切な発想法を組み合わせる、二次元思考から生まれます。この二次元思考のことを「イデアルテ思考」と呼びます。マルタの心理学者であるエドワード・デノボは、思考法、すなわち基本となる物事の考え方のことを垂直思考と呼び、発想法、すなわち多角的に拡散的に発想を広げていく物事の考え方のことを水平思考と呼び区別しました。彼は、水平思考の重要性を説いています。しかし、いきなり水平思考ができるのは、やはり右脳人間です。現実はそう簡単ではありません。そこで、それを誰にでもできるように単純化、マニュアル化したのが、思考法をベースとした二次元思考である「イデアルテ思考」なのです。

 

ぜひとも、論理的に物事を整理して考え、そこに抜け漏れなくアイデアを洗い出して当てはめていく、極めて左脳的で視野を絞った考え方であるイデアルテ思考を理解し、マニュアル的に簡単に革新的なアイデアを量産してほしいと思います。

発想法とは


発想法とは、アイデアを発想するためのツールです。フォーマット化されたシートを使用する場合や、ホワイトボードに書き出していく場合など、様々なツールが存在していますが、これらの多く(必ずしも全てではありません)は商品コンテンツとして作られました。つまり、アイデアを発想するために作られたというよりは、アイデア発想のための商品コンテンツとして開発されており、コンテンツを用いてセミナーを行ったり、本を執筆したり、コンサルティングを行うことで収益を得ることが目的なのです。そのため、キャッチーな名前が付けられたアイデア発想法も少なくありません。

 

また、アイデア発想法のセミナーの多くは、実際にその場でワークを行います。そのため、受講者がその場で簡単に実践できる必要があり、シートの空欄を埋めていくだけのような単純なツールがほとんどです。このようなツールは、適したお題に対して使う上では高い効果を発揮するのですが、ツールとの相性の悪いお題に対しては全く機能しなくなります。これが、セミナー会場のワークでは新しいアイデアを発想することができたのに、後日実践してみると全くもってアイデアを発想できなくなる理由です。商品コンテンツとして単純に作られているが故に、習得が簡単である反面、活用できる場面が非常に限られており、汎用性がないのです。従って、アイデアを発想したいお題に合わせて、相性のよいアイデア発想法を選定しなくてはなりません。この使い分けが難しいのです。このように、アイデア発想法とは、相性のよい特定の種類のお題に対して効果を発揮する、簡単で汎用性のない、商品コンテンツとしてのツールなのです。

発想法の種類


世の中には、星の数ほどの発想法が存在します。その多くは、商品コンテンツとして作られたものですが、お題に適した相性のよい発想法を選択することで、革新的なアイデアを発想できる場合もあります。そこで、世の中にあるアイデア発想法のごく一部を紹介したいと思います。

※発想法の名前をクリックすると、説明ページにリンクします。

○MECE(ミッシー/ミーシー)

商品コンテンツとして開発された多くのアイデア発想法が存在する中、膨大な数の事例を研究し、明確な根拠に基づいて体系化された手法もありますので、そのような発想法は、革新的なアイデアを無駄なく効率的に発想できる可能性が高いと言えます。上記の中では、「智慧カード」の論理根拠となっている「TRIZの発明原理40」がそれに相当しますので、知っておく価値はあります。

思考法とは


思考法とは、基本となる考え方のことです。物事を考える際のベースとなるものですので、どのような場面でも当てはめることができ、汎用性が高い反面、発想法と違って漠然としているため、習得に時間がかかります。最も有名な思考法の例としては「ロジカンルシンキング」があります。すなわち、論理思考です。どのような場面においても、論理的に物事を考えることはできますので、極めて汎用性は高いのですが、あくまでも考え方の概念的な話であり、実際にどのように考えたらいいのかというツールが存在するわけではありませんので、難易度は高いと言えます。しかし、有用性は極めて高いので、論理思考だけでも習得してほしいと思います。

発想法と思考法の組み合わせ


前述の通り、思考法をベースとした一定の法則により、革新的アイデアは生まれます。具体的には、最も代表的な思考法である「論理思考」をベースに、必要に応じて適切な発想法を組み合わせた二次元思考から生まれます。この二次元思考のことを「イデアルテ思考」と呼びます。心理学者エドワード・デノボは、論理思考のことを「垂直思考」と呼び、発想法のことを「水平思考」と呼んでいますので、垂直と水平、すなわち縦軸と横軸を組み合わせることで二次元思考になるのです。二次元思考を行う際の重要なポイントは、順序です。まず初めに、論理思考により物事を論理的に切り分けて考えます。その後、論理的に切り分けられた各パーツごとに焦点を絞って、必要に応じて発想法を用いてアイデアを洗い出していきます。アイデアを洗い出す際は、他のパーツのことは一切考えず、視野を狭く、焦点を絞って、ひとつのパーツだけに集中することが重要です。この作業を、論理的に切り分けられたパーツの数だけ繰り返すことで、革新的アイデアを量産することができるのです。

二次元思考によるアイデア発想


二次元思考「イデアルテ思考」を用いたアイデア発想の手順を、具体的なお題に沿って解説していきます。

①羽のない扇風機はなぜ生まれたのか?

ダイソンの羽のない扇風機は非常に有名ですが、羽をなくすという革新的アイデアは、イデアルテ思考を用いることで、誰でも簡単に発想することができます。

 

羽のない扇風機は、小さな子供が扇風機に指を突っ込んで怪我をしてしまったという事例をもとに、商品課題を解決する目的で生まれました。ここで、商品課題の解決について論理的に考えます。なぜ小さな子供は、指を怪我してしまったのでしょうか。課題が発生する経緯について、論理的に切り分けて考えていきます。

<課題発生経緯の論理的分割>

夏は暑い

 ↓

涼しくなりたいと思う

 ↓

扇風機を使う

 ↓

スイッチを入れる

 ↓

動力が羽に伝わる

 ↓

羽が勢いよく回転する

 ↓

網の隙間に指を入れる

 ↓

指が羽の縁に当たる

 ↓

指が切れる

次に、切り分けられたそれぞれの経緯について、課題の根源を一言で言い表してみます。

<課題の根源を併記>

夏は暑い

【気温】

 ↓

涼しくなりたいと思う

【個人的欲求】

 ↓

扇風機を使う

【扇風機の存在】

 ↓

スイッチを入れる

【スイッチの存在】

 ↓

動力が羽に伝わる

【羽の存在】

 ↓

羽が勢いよく回転する

【羽の動き】

 ↓

網の隙間に指を入れる

【網の構造】

 ↓

指が羽の縁に当たる

【羽の構造】

 ↓

指が切れる

【指の強度】

論理思考によって切り分けることで整理された、課題発生経緯の各パーツにおける課題の根源について、ひとつずつ解決策のアイデアを列挙していきます。視野を広げず、課題の根源を解決する手段を、ストレートに考えます。

<解決策の列挙>

【気温】

・地球の角度を変える

【個人的欲求】

・忍耐力を養う

【扇風機の存在】

・扇風機を使わない(エアコンを使う)

【スイッチの存在】

・スイッチをなくす

・スイッチが入らないようにする

【羽の存在】

・羽をなくす

・羽以外のものに代用する

【羽の動き】

・羽がゆっくり回転する

・羽が回転しないようにする

【網の構造】

・指が入らない細かい網にする

・羽と網の距離を広げる

【羽の構造】

・鋭利でない丸みのある羽の縁にする

【指の強度】

・指を鍛える

・手袋をはめる

見てわかる通り、ストレートに解決策を示しただけで、特別な発想は一切していませんが、「羽をなくす」というアイデアが生み出されています。このように、論理思考で課題発生経緯を切り分け、それぞれのパーツに焦点を絞ってアイデアを洗い出していくことで、必然的に、漏れなく革新的なアイデアは生まれてくるのです。

 

余談にはなりますが、課題発生経緯の上流から生まれたアイデアは非現実的なものが多く、下流から生まれたアイデアは誰でも思いつきやすく既に商品化されている可能性の高いものが多い傾向にあります。例えば、上流にある「地球の角度を変える」は、アイデアが飛躍しすぎていて非現実的です。下流にある「指が入らない細かい網にする」「鋭利でない丸みのある羽の縁にする」は、ほとんどの他社商品で既に採用されています。そして、中流あたりから生まれたアイデアこそが、革新的なアイデアとなるケースが非常に多い傾向にあります。「羽をなくす」も中流にありますし、「羽が回転しないようにする」というアイデアも面白いかもしれません。固定された羽が一枚だけついていて、その羽に開いたいくつかの小さい穴から風が吹き出してくるという設計もあるのではないでしょうか。

 

このように、二次元思考「イデアルテ思考」を用いて手順通りに考えていくだけで、誰にでも簡単に革新的アイデアを生み出すことができるのです。ちなみに、上記の例題では発想法は使用しませんでしたが、論理思考により切り分けた後、各パーツに焦点を絞ってアイデアの洗い出し作業を行う際に、適切な発想法を活用することで、アイデアの数を増大させることができます。ぜひともイデアルテ思考の手順に沿って物事を考え、革新的アイデアを量産してほしいと思います。

②俺のフレンチはなぜ生まれたのか?

立ち食いフレンチの外食店である俺のフレンチは非常に有名ですが、フレンチレストランを立ち食いにするという革新的アイデアは、イデアルテ思考を用いることで、誰でも簡単に発想することができます。

 

俺のフレンチは、飲食店の売上をあげるための手段を考える中から生まれました。ここで、売上アップの手段について論理的に考えます。売上の大きさは、どのような因子から成り立っているのでしょうか。飲食店経営者であれば普通に考えることですが、まずは売上構成因子について、論理的に切り分けて考えていきます。利益は売上から経費を差し引いたものですが、ここでは利益ではなく売上について論じていますので、原材料費や光熱費などの経費については無視し、売上に直結する因子のみで考えます。

<売上構成因子の論理的分割>

・客単価

・新規顧客数

・リピート率

・回転率

論理思考によって切り分けることで整理された、売上構成因子の各パーツごとに、なぜ売上が上がらないのかという視点に立って課題発生要因を分割して列挙していきます。ここでは、「回転率」を例に挙げて話を進めます。

<課題発生要因の論理的分割>

なぜ回転率が上がらないのか?

=なぜ長居してしまうのか

・メニューが多くて迷ってしまうから

・料理のボリュームが多いから

・料理を追加注文するから

・仲間との会話が弾むから

・店員との会話が弾むから

・椅子の座り心地がいいから

・店内の雰囲気がよくて落ち着くから

・時間を忘れてしまうから

論理思考によって切り分けることで整理された、課題発生要因の各パーツごとに、解決策のアイデアを列挙していきます。視野を広げず、課題を根本的に解決する手段を、ストレートに考えます。

<解決策の列挙>

【メニューが多くて迷ってしまうから】

・メニューを1つだけにする

【料理のボリュームが多いから】

・一皿に盛る量を少なくする

【料理を追加注文するから】

・追加注文禁止の一発勝負にする

【仲間との会話が弾むから】

・私語厳禁にする

・お一人様限定にする

【店員との会話が弾むから】

・無口な店員にする

【椅子の座り心地がいいから】

・硬い椅子にする

・椅子をなくして立ち食いにする

【店内の雰囲気がよくて落ち着くから】

・早く帰りたくなるくらい寒い店内にする

【時間を忘れてしまうから】

・各テーブルに時計を置く

・時間制限を設ける

見てわかる通り、ストレートに解決策を示しただけで、特別な発想は一切していませんが、「椅子をなくして立ち食いにする」というアイデアが生み出されています。このように、論理思考で課題発生要因を切り分け、それぞれのパーツに焦点を絞ってアイデアを洗い出していくことで、必然的に、漏れなく革新的なアイデアは生まれてくるのです。ここで大事なことは、各パーツに焦点を絞ってアイデアの洗い出し作業を行うということです。他のパーツのことを同時に考えたり、フレンチであるという前提因子を考えてはいけません。立ち食いのフレンチという思考は一切持たず、「椅子の座り心地がいいから」という課題に対してストレートに解決策を示したことで、革新的なアイデアが生まれました。視野を広げてはいけないのです。

 

他の課題に対しても、例えば「メニューが多くて迷ってしまうから」という課題であれば、「メニューを1つだけにする」というアイデアが生まれていますが、実はこのアイデアにより回転率をあげて成功している外食店があります。神保町にある未来食堂という定食屋で、メニューは日替わり1種類のみで営業しており、ランチタイムだけで平均7回転という驚くべき回転率を達成しています。

 

このように、二次元思考「イデアルテ思考」を用いて手順通りに考えていくだけで、誰にでも簡単に革新的アイデアを生み出すことができるのです。ぜひともイデアルテ思考の手順に沿って物事を考え、革新的アイデアを量産してほしいと思います。