ビジネスアイデアパターン
ほぼ全ての事業は、顧客のターゲット層を絞って展開しています。それは、ターゲット層のニーズが最も大きいためです。一方、需要規模はターゲット層に比べれば小さいものの、ターゲット以外の顧客層にも、一定の需要は存在します。しかし、ターゲット層をイメージして店舗設計、サービス設計をしているため、ターゲット層以外の人にとっては、店舗に入りにくい、商品を購入しにくい、サービスを受けにくいなどという場合が多くあります。そこで、あえてターゲット層以外の顧客層を対象に事業を展開することで、潜在ニーズを掴みにいくというビジネスモデルです。
Soup Stock Tokyoは、株式会社スープストックトーキョーが運営する、おいしいスープが気軽に食べられるファストフード店で、駅などに多く出店しています。これまで、駅にある立ち食いそば、大手ファストフード店など、気軽に立ち寄って短時間で食べられるファストフード店は、全て男性サラリーマンがターゲット顧客でした。そのため、女性がひとりで食べるには抵抗のある雰囲気の店ばかりでした。しかし、女性の社会進出が進むにつれ、女性がひとりで気軽に立ち寄れるファストフード店にも一定の需要が見込まれたことから、女性を意識した店舗作り、メニュー作りを行い、Soup Stock Tokyoが誕生しました。働く女性のファストフード店として支持され、店舗数を大きく伸ばしています。
コロット(Korot)は、トラボックス株式会社が運営するクレープのお店で、駅ナカを中心に出店しています。これまでクレープなどのスイーツは、女性が食べるイメージが強く、女性にとって立ち寄りやすい店舗作りがなされてきました。そのため、男性が立ち寄るのは恥ずかしいという抵抗感が少なからずありました。しかし、スイーツ好きの男性も増えてきており、男性が気軽に立ち寄れるスイーツ店にも一定の需要が見込まれたため、地下鉄の駅のホームなどに売店形式のクレープ店としてコロットが誕生しました。駅の売店で新聞や缶コーヒーを買うのと同じ感覚で、男性サラリーマンが次々とクレープを購入していきます。
東京海上日動火災保険株式会社は、24時間単位で加入できる1日自動車保険「ちょいのり保険」のサービスを提供しています。自動車保険は、通常、自動車を所有している人を対象としたサービスを提供していますが、ちょいのり保険は、自動車を持っていない人を対象としています。家族の車を借りたり、友人の車を借りて運転する際に、1日単位で加入することができるのです。自動車を持っていない人にも、自動車保険のニーズがあることに目をつけ、ターゲットをずらすことで、潜在ニーズを獲得することに成功しています。
埼玉県にある川越救急クリニックは、夜10時まで診療を行っている、夜専門のクリニックです。多くの一般的なクリニックは、高齢者や重病の人をターゲットとしているため、朝早くから、夕方までの診療となっています。しかし、昼間は普通に働けるけど体の調子が悪いというサラリーマンはたくさんいます。このような人は、病院に行く時間がない、夜は病院がやっていないなどの理由で、結局医師の診察を受けることなく我慢してしまうのです。そこに目をつけ、川越救急クリニックでは、昼間は普通に働いているサラリーマンを対象に、夜10時まで診療を行っています。それにより、仕事上がりの多くのサラリーマンに頼られる病院となり、訪れる患者の数は増え続けています。また、夜間だと軽い症状でも大学病院などの救急科に行かざるを得ず、本当に救わなくてはいけない重病の患者を救えなくなってしまうというこれまでの課題の解決にも、一役買うことができます。
ほとんどの銀行の窓口は、朝9時から午後3時までの営業となっています。法人などの大口顧客を主な対象としているため、このような営業時間となっていますが、これではサラリーマンなどの個人顧客は窓口に行くことができません。インターネットで様々な手続きができるようになってきているとはいえ、窓口に行かなければできない手続きも多くあり、銀行に行くために会社を休まなくてはならないという声も聞かれます。そのような課題に目をつけ、イオン銀行では、365日、毎日午前9時から午後9時まで窓口営業を行っています。サラリーマンなどの個人顧客を対象に窓口営業時間を設定したことで、多くの個人顧客を獲得しています。
画像引用元:株式会社イオン銀行HP(https://www.aeonbank.co.jp)
QBハウスは、10分1000円で髪をカットする、カット専門理髪店として急速に拡大しました。10分という短時間、1000円という低価格(誕生当初の価格です)、そしてカットのみで余計なサービスを一切省くことで、多くの男性の心を掴んでいます。また、少数ではありますが、女性客が来店することもあります。つまり、短時間で手早くカットだけしてほしいという女性のニーズも、一定数存在しているのです。しかし、QBハウスは、女性にとって入りやすい店舗にはなっていません。そこで、女性が入りやすいカット専門店があってもいいのではないでしょうか。10分1000円でカットのみ、もちろん予約は不要で、カットしているところは外からは見えない作りにし、外観は女性が入りやすい綺麗な雰囲気にすることで、QBハウスに行きたくても行きにくいと感じていた女性のニーズに応えられるはずです。女性専用と謳ってしまってもいいかもしれません。
自動車保険は、通常、免許を持っている人を対象とした保険です。しかし、免許を持っていない人が自動車を運転する場面もあります。例えば、仮免許を取得した状態で、公道で練習をする場合です。一般的な自動車保険は、運転者の範囲を限定している場合も多く、仮免許取得者が運転中に事故を起こした場合、その範囲外となってしまうケースも多々あるのです。教習所の教習車の場合は、仮免許取得者にも範囲が及ぶ保険形態となっていることがほとんどですが、絶対ではありませんし、あくまでも事故を起こした場合の責任は、教官ではなく運転者本人です。そこで、仮免許取得者に限定した、仮免許自動車保険があってもいいのではないでしょうか。仮免許運転中の運転者を手厚く保護する内容の保険とし、実際に免許を取得できた際は、祝い金の還付や、通常の自動車保険に割引価格で切り替えられるなどのサービスをつけることで、通常の自動車保険の顧客獲得にも繋げることができます。