商品アイデアパターン

伝統と最先端のコラボレーション


日本全国、そして世界には、伝統工芸といわれるものが多く存在します。特に日本の地方に古くから受け継がれている伝統工芸は、非常に高い技術力を誇り、品質の高い伝統工芸品が眠っています。しかし、過疎化や後継者不足、そして需要の減少により、その多くが姿を消そうとしています。そこで、需要が高まっている最先端の分野の商品とコラボレーションをすることで、最先端技術と伝統工芸技術が融合した、全く新しい商品を製造し、全く新しい価値を世の中に送り出すという、商品アイデアパターンです。

■茶筒スピーカー

京都にある開化堂は、職人が手作業で作る茶筒の伝統工芸メーカーです。品質の高い高級な茶筒を製造し、その技術は確かなものですが、茶筒自体の需要が減少しているため、経営も悪化していました。そこで、パナソニック株式会社の最先端技術を搭載したスピーカーとコラボレーションし、茶筒スピーカー「響筒」を開発しました。開化堂の茶筒の美しさと、パナソニックのスピーカーの音がマッチし、新しい世界を演出しています。また、茶筒のフタが極めて精密に作られているため、フタをすると完全に音が聞こえなくなるという、伝統工芸の技術力も大いに発揮され、多くの人の関心を集めています。

画像引用元:開化堂HP(http://www.kaikado.jp)

■IH対応木製燗徳利

京都にある中川木工芸は、伝統的な技法を用いて職人が作る桶(おけ)などの木工芸品の伝統工芸メーカーです。品質の高い高級な木桶を製造し、高い技術力を誇りますが、桶自体の需要が減少しているため、経営も悪化していました。そこで、パナソニック株式会社の最先端技術を搭載したIHヒーターとコラボレーションし、IH対応木製燗徳利「燗酒器」(kan-shuki)を開発しました。中川木工芸の木桶の美しさをモダンに進化させ、パナソニックのIH技術を利用することで温度制御が可能となり、それぞれのお酒に合った最適な温度でお酒を楽しむことができるという、全く新しい徳利の世界を実現し、お酒好きからの大きな支持を得ています。

画像引用元:パナソニック株式会社HP(https://panasonic.co.jp)

■織物装飾小型冷蔵庫

日本には、織物の伝統工芸が各地に存在しています。例えば、京都の西陣織や福岡の博多織など、全国的に有名なものも多くありますが、織物の生産量は減少傾向にあります。一方、旅館やホテルで使用される小型冷蔵庫の技術の進歩は著しく、客室に置かれるため、音が静かであることが非常に重要で、静音性に優れた電子冷蔵庫も普及してきています。しかし、高級旅館や高級ホテルの場合、客室に置かれた冷蔵庫が、室内の高級感を損なうことから、収納の中に入れるなどの方法が取られています。そこで、高級織物を冷蔵庫の扉前面にあしらった、小型冷蔵庫があってもいいのではないでしょうか。高級織物が額に飾られたような高級感のある外観にすることで、収納に入れることなく、あえて見せる冷蔵庫として利用することができます。

伝統工芸と最先端技術のコラボレーションは、「組み合わせ」のアイデア発想パターンの典型的な事例です。日本全国、そして世界に眠る伝統工芸を洗い出し、最先端の技術と組み合わせることで、可能性は無限に広がります。

 

伝統工芸においては、見た目の美しさや、工芸技術の精密さに焦点をあてて選定することが重要で、最先端技術においては、需要の高い家電製品を中心に選定することが重要です。そして、これらを組み合わせることで、単価の高い高級品として仕上げることができるか、つまり、高額でも欲しいと思う人がいるかについて考えることで、ビジネスとして成功できるかどうかが決まります。ぜひともこのような視点から、伝統工芸と最先端技術のコラボレーションについて、考えてみてください。

 

また、少し焦点がずれますが、優れた伝統工芸技術を持ちながらも、経営に苦しむ工房は日本全国に多数あります。そこで、日本の伝統工芸技術を途絶えさせないよう、最先端技術とコラボレーションさせるコンサルティングというビジネスも、十分に可能性のあるビジネス形態となりますので、併せて考えてみるのも良いかもしれません。