商品アイデアパターン
商品を購入する消費者は、ほとんどの場合、何らかの目的があって購入します。しかし、多くの消費者に多くの場面で使用してもらいたいという意図から用途目的が漠然としている商品や、逆に、ある限られた用途目的のみでの展開しかしていない商品が多く存在しています。そのため、どのような用途目的で使用する商品なのかが消費者に伝わらなかったり、本来であれば様々な用途に応用可能な商品であるにもかかわらず、その価値を消費者に伝えきれていなかったりというケースがたくさんあります。そこで、商品の軸となる特長をベースに、応用可能な用途目的を明確化し、用途目的ごとに商品展開をすることで、消費者の購入目的に広くアプローチをしていくという商品アイデアパターンです。
花王株式会社は、掃除用洗剤「マジクリン」シリーズを幅広く展開しています。掃除用洗剤の汚れを落とすというベースとなる技術は共通のものですが、それぞれの用途目的に応じて使いやすいように設計し、幅広く横展開をしています。バスマジックリン、トイレマジックリン、キッチンマジックリン、ガラスマジックリン、フローリングマジックリンなど、多岐に渡ります。消費者ニーズの原点は、課題解決です。そのため、その商品を購入することにより解決できる課題が明確であればあるほど、消費者の心に刺さりやすいのです。購入目的が明確である消費者にとって、理解しやすいのです。核となる技術や強みを活かし、それを軸に用途目的に応じて横展開していく、非常にわかりやすい事例です。
醤油は、日本古来からの伝統ある発酵調味料ですが、非常に汎用性が高いため、多くの料理に使用されています。また、醤油の種類も多く、原料や製法などの微妙な違いにより、数え切れないほどの醤油が存在しています。消費者は、料理に使用するために醤油を購入しますが、汎用性が高い上に種類が多く、どのような種類の醤油を、どのような料理に使用するのが適しているのかを理解している人は少ないのが実態です。そこで、消費者が実際に求めているもの、すなわち、作ろうとしている料理に適した醤油はどれなのかという情報を商品コンセプトに盛り込むことで、あらゆる料理の専用醤油が各社から発売されるようになりました。卵かけご飯専用醤油、豆腐専用醤油、刺身専用醤油、うどん専用醤油、お餅専用醤油、アイスクリーム専用醤油など様々です。それぞれの料理との相性を意識した商品設計にし、消費者のニーズに直接的にアプローチをすることで、消費者が欲しいと感じる醤油が展開されています。
料理に使用する油には様々な種類がありますが、それらは原料別に種類分けされた展開となっています。しかし、実際のところ消費者は、目的を持って油を購入しますので、どのような料理にどのような油を使用するのが適しているのかという情報を必要としています。つまり、油の原料ではなく、用途や機能で選ぶのです。そこで、用途目的を明確化したコンセプトで商品展開をすることで、消費者のニーズに直接的に応えられるのではないでしょうか。例えば、天ぷら専用油、唐揚げ専用油、炒め物専用油、サラダなどの非加熱専用油などというように、それぞれの用途に適した原料、適した精油方法、適したブレンドで商品化することで、消費者にとってわかりやすい商品展開となります。