商品アイデアパターン
新しい商品が開発される場合、必ず何らかの明確な目的を達成するための機能や役割を付与します。食品を冷やす機能を持つのが冷蔵庫であり、写真を撮影する機能を持つのがカメラであり、その機能を失ってしまっては、もはや存在意義がありません。しかし、あえてその機能を取り除き、全く異なる役割を与えることで、既成概念にとらわれない全く新しい価値を持つ商品が生まれる可能性があります。このように、本来の機能や役割をあえて取り除き、新たな価値を付与するという商品アイデアパターンです。
ロボットは、人間が行う仕事や作業を代わりに行うことを目的に開発され、様々な業界で優秀なロボットが活躍しています。一方、ソニー株式会社が販売するaibo(アイボ)は、犬の形をしたロボットで、人間が行う仕事を代わりに行うようなことはなく、従来の視点では全く役に立ちません。ロボット本来の機能や役割は、全て除かれています。aiboは、まるでペットのように、飼い主や周りの環境のことを理解し、人と触れ合い、時にはいたずらをして人に迷惑をかけることもあります。役に立たないどころか、迷惑をかけることもあるロボットなのです。しかし、その愛くるしさに、本物のペットを飼っているかのような愛着を覚え、人々に必要とされています。愛着心が生まれることで心が満たされるという、既成概念には全くなかった役割がロボットに付与され、新しい市場を形成しています。
画像引用元:ソニー株式会社HP(https://aibo.sony.jp)
ロボットは本来、人間の行う仕事や作業を代わりに行うという役割ですが、GROOVE X株式会社が開発したLOVOT(らぼっと)は、不思議な生命体ロボットで、人間の仕事を代行するような機能は一切ありません。世話のやける家族として、一緒に生活をするロボットなのです。ペットともまた異なる位置付けで、手のかかる幼い子供が一人増えたような感覚に近いと言えます。一緒に生活をし、コーディネートなどもすることができます。手をかけられ、愛されることが、らぼっとの役割なのです。本来のロボットの役割は全くなく、新たな役割が付与されることで、全く新しい世界が広がります。
画像引用元:GROOVE X株式会社HP(https://groove-x.com)
冷蔵庫は、食品を冷やして保管しておくための家電ですが、スタイリッシュな冷蔵庫や、レトロ感のある冷蔵庫など、インテリア性にもこだわった商品が増えてきています。そこで、冷やすという機能を完全になくし、インテリア性だけにこだわった商品があっても面白いのではないでしょうか。例えば、歴史を感じるレトロな外観の冷蔵庫でありながら、冷蔵という機能は一切なく、ただの収納ボックスになっています。インテリアとしての価値をレトロな冷蔵庫型という外観に追求した、リビングなどに置くための収納です。本棚や食器棚など、あらゆる収納として使用することができます。冷やすという本来の役割をあえてなくすことで、新たな商品価値を提供することができます。