セールスアイデアパターン

接客せずに自由に体験させる


商品を販売する方法として、顧客に対して営業担当者が個別に接客をするという手法があります。この方法は、高額な商品を販売する場合において使われる傾向が強く、それが業界常識となっている場合も少なくありません。しかし、顧客にとっては、営業担当者に接客されることが心理的ハードルとなり、軽い気持ちで店舗を訪れることができないと感じている人も少なくありません。このような実態を背景に、少数の顧客に確実に販売するという考え方から脱し、多くの顧客に気軽に訪問してもらい、実際に見て、触って、体験してもらうことを重視し、接客は一切行わないというセールスモデルです。

■アールシーコア

株式会社アールシーコアは、ログハウス専門の住宅メーカーで、BESSというログハウスを販売しています。一般的な住宅メーカー同様、住宅展示場を設けて、顧客に実際のログハウスを見てもらう仕組みを取っていますが、決定的に違う点があります。それは、営業マンが顧客に一切付かず、顧客は自由にログハウスを体験することができるという点です。一般的な住宅メーカーは、顧客一組に対して営業マンが一人付いて接客をしますが、アールシーコアは一切付かないため、顧客は気軽に展示場に訪れることができるのです。実際、ログハウスを購入する顧客の6割は、初めは何となく面白そうだから週末に訪れてみたという人なのです。つまり、テーマパークのように顧客が遊びに来るという状況を作り出しています。接客をしないことで顧客が気軽に訪れやすくなり、実際に体験をしてもらうことで購入につながるという、正のスパイラルがうまく回っている事例です。

■日本エイジェント

株式会社日本エイジェントは、不動産仲介業者で、無人型不動産店舗を増やすことで成長しています。一般的な不動産業者は、スタッフが常駐していて、顧客が来店すると営業マンが個別に対応をするため、顧客にとっては軽い気持ちで入ることができないという大きな心理的ハードルがあります。そこで、「スタッフレスGO」と呼ばれる無人の機械をスーパーマーケットの一角などに設置し、自由に情報を見ることができるようにしたのです。タッチパネル式の機械に物件の条件などを選択して入力すると、それに合致する物件の情報が出てきて、プリントアウトすることもできます。その結果、何となく不動産の情報を見てみたいという顧客が気軽に利用でき、実際に有人店舗に問い合わせをする顧客も大幅に増えています。

画像引用元:株式会社日本エイジェントHP(https://www.nihon-agent.co.jp)

■接客しない高級アパレルブランド

アパレルブランドの多くは、店内に接客スタッフを配置し、顧客が入店してくると、個別に接客をして販売します。高級で高価格帯のブランドになればなるほど、その傾向は強いと言えます。そのため、本当は高級アパレルブランドに興味はあるものの、接客されることで自由にゆっくりと商品を見ることができないため、カジュアルブランドで商品を買うという人も少なくありません。そこで、店員は一切顧客に付かず、接客をしない高級アパレルブランド店舗があってもいいのではないでしょうか。高価格帯の商品が店舗には並んでいるため、セキュリティー目的で店員が巡回する必要はありますが、顧客には一切付かず、接客をしないことで、買うつもりがなくても気軽に何となく入れる店舗になり、結果的に顧客の数は増加することが期待できます。