セールスアイデアパターン
商品やサービスを販売する際、価格設定は非常に重要で、消費者は価格に敏感に反応します。しかし、必ずしも安くすれば売れるとも限りませんし、安くするにも経営上の限界があります。そこで、消費者の購買心理を活用して購入したいと思わせる価格の見せ方を工夫し、商品自体の価格を下げることなく購入行動に導くというセールスモデルです。
顧客の心理をうまく活用した価格設定の事例として、松竹梅という戦略があります。これは、商品やサービスのグレードを3段階に設定するという方法です。例えば、定食屋のメニューの場合、低グレードの「とんかつ定食」と高グレードの「上ロースかつ定食」の2グレード展開であれば、低グレードのメニューを注文する顧客が多くなります。これは、2者択一の場合、コスト意識から安い方を選びたくなるという心理に基づきます。そこで、更にハイグレードの「極上霜降りロースかつ定食」を新たに加えて3グレード展開にします。それにより、「上ロースかつ定食」が真ん中のグレードに変わるため、注文が大きく増えるのです。これは、真ん中のものを選びたくなるという「極端回避性」と呼ばれる心理行動に基づきます。このような3グレード展開により真ん中のグレードの商品を売るという戦略が、多くの業界で採用され、成果をあげています。
外食店のドリンクメニューは、通常、アルコールドリンクのページとソフトドリンクのページが分かれています。そのため、アルコールを飲めない人は、ソフトドリンクのページから選ぶことになりますが、一般的にアルコールドリンクの方が価格が高く、支払いを割り勘にする場合、どうしてもソフトドリンクを飲む人は損をしている気持ちになります。そこで、アルコールドリンクとソフトドリンクを、同じページで価格を対比させて記載してはいかがでしょうか。例えば、800円のページには、左に1杯800円のアルコールドリンク、右に同じく1杯800円のソフトドリンクを記載します。当然、ソフトドリンクで800円ですから、ブランドフルーツを使った生ジュースなど、ハイグレードのドリンクになります。このように、同一価格のアルコールドリンクとソフトドリンクを価格ごとに対比表記することで、ソフトドリンクを飲む人が気軽に高額なソフトドリンクを注文できるようになるため、結果的に注文単価を引き上げることができます。
オプションで付随する商品やサービスを付けることで価格が上がっていくという価格設定は、多くの業界で用いられています。例えば、美容室であれば、ベースのカット料金に加え、オプション料金でカラーリング、トリートメント、ヘッドスパなど様々なサービスが用意されています。オプションを自由に選べるという自由度は非常に高いのですが、オプションを付けることにより価格が上がっていくという心理的ハードルがあるのも事実です。そこで、ベースをハイグレードでフルスペックのセット料金にしておき、そこから不要なものを除くことで料金が下がっていくというマイナスオプションの仕組みがあっても面白いのではないでしょうか。それにより、ハイグレードのサービスが割引で受けられるという顧客心理を誘発できる可能性があります。美容室に限らず、オプションにより追加料金を設定している業態であれば、全てに応用できますので、考えてみる価値はあるかと思います。